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岡山の高校受験は「推薦入試」と「一般入試」、どっちが有利?

中学3年生にとって、高校受験で「推薦入試」と「一般入試」のどちらを選ぶべきか迷うことはありませんか?岡山県では、公立高校入試に特別入学者選抜(いわゆる推薦入試)と一般入学者選抜(一般入試)の2つの方式があります。それぞれ出願条件や試験内容、合格発表までの流れが異なり、メリット・デメリットもあります。この記事では、岡山県の高校受験における推薦入試と一般入試の違いをわかりやすくまとめ、どちらが有利か検討するためのポイントを解説します。中学生の皆さんや保護者の方が進路選択の判断材料にできるよう、最新のデータや制度にも触れながら整理していきます。

推薦入試と一般入試の制度の違い

まず、推薦入試(岡山県では特別入学者選抜と呼ばれます)と一般入試の制度上の違いを見てみましょう。出願できる条件や試験内容、選抜方法、日程にどのような差があるのかを比較します。以下に主な違いを表にまとめました。

項目 推薦入試(特別入学者選抜) 一般入試(一般入学者選抜)
出願条件 志望校の学科・コースに対する強い興味関心・適性があり、志望動機が明確であること(調査書や自己申告書でアピール)※基本的に専願(合格したら必ず入学) 岡山県内の中学校卒業見込みであれば誰でも出願可(特別な推薦条件はなし)※公立は1校のみ志願可能(私立併願は可)
募集人数 学科・コースごとに定員の数%を募集(学校によって定員の5割~8割程度が上限)。一部専門学科では100%を推薦枠で募集する例もあり 募集定員から推薦合格者を除いた残り枠が一般入試の定員となる(推薦枠が多い学校ほど一般枠は減少)
出願校数 1人1校1学科のみ出願可(複数校への同時出願不可) 1人1校のみ志願可(※学校によっては第2・第3志望の学科を同一校内で書ける場合あり)志願後の変更不可
学力検査 国語・数学・英語の3教科(リスニング含む英語)を実施。各教科45分・70点満点(合計210点満点) 国・数・英・理・社の5教科を実施。各教科45分・70点満点(合計350点満点)※岡山朝日高校の一部教科は独自問題
その他の検査 面接が必須。加えて各校の特色に応じて口頭試問・小論文・作文・実技のいずれかを1つ以上課す(学校ごとに異なる) 学校・学科によって面接や実技試験を課す場合あり
選抜方法 調査書(内申書・学力検査(3教科)・面接・選択検査(小論文等)の結果を総合的に判断して合否決定。※中学での成績や活動実績、意欲が重視される傾向 調査書・学力検査(5教科)+(面接・実技の結果※実施校のみ)を総合的に判断。ただし基本的には学力試験の点数比重が大きい(筆記試験重視)
日程 出願:例年1月下旬(2025年は1/21~1/23)学力検査・面接等:2月上旬(2025年は2/5・2/6)内定通知:2月中旬(合格内定者に中学校経由で通知)正式合格発表:3月中旬(一般入試と同日に発表) 出願:例年2月下旬(2025年は2/25~2/27)学力検査:3月上旬(2025年は3/11・3/12)合格発表:3月中旬(2025年は3/19)※一般入試後、定員割れ校対象に二次募集あり(例年3月下旬)

岡山県では推薦入試を公式には「特別入学者選抜」と呼びます。本記事でも推薦入試=特別入学者選抜、一般入試=一般入学者選抜として説明します。

上記のように、推薦入試と一般入試では受験の流れが大きく異なります。推薦は1校のみ専願で出願し、筆記は3教科+面接・作文等で総合評価されます。一方、一般入試は基本的に5教科の学力テスト勝負で、内申点も見られますが配点の多くは筆記試験です。それぞれの詳細についてもう少し補足します。

  • 推薦入試の出願条件と枠: 岡山県では推薦入試で募集する定員割合は学校ごとに異なり、概ね定員の5割以内でしたが、2023年度から上限が8割に引き上げられました。普通科で推薦枠を設けない学校もありますが、多くの専門学科総合学科や一部の普通科で推薦選抜を実施しています。例えば、倉敷天城高校(理数科)や津山高校(理数科)、玉野光南高校(体育科)など専門コースでは定員の100%を推薦入試で募集しています。志望校によっては推薦で合格内定者を出した段階で一般入試の募集人数が大きく減るケースもあります。

  • 試験内容の違い: 推薦入試では3教科(国数英)の筆記試験があります。面接は全員必須で、学校によっては小論文や実技試験など独自の検査が課されます。たとえば、国際系コースなら英語面接、体育科なら実技試験、理数科なら口頭試問(理科実験を含む)など、それぞれ特色ある選考が行われます。一般入試では5教科すべてを受験し、基本的に筆記試験と内申点で合否判定します。筆記試験の難易度は県内共通ですが、岡山朝日高校など一部トップ校は主要教科で自校作成の問題を使用しており、若干難易度が高い傾向です。

  • 日程の違い: 推薦入試は本番の日程が一般入試より1か月以上早いのが特徴です。出願は1月下旬、試験は2月上旬に実施され、結果は「合格内定者」として2月中旬に通知されます。正式な合格発表自体は一般入試と同じ3月中旬ですが、内定をもらえれば事実上合格が決まるため、公立第一志望の場合はその時点で進路が確定します。一方、一般入試は出願が2月下旬、試験は3月上旬で、結果発表が3月中旬という全国的にも標準的なスケジュールです。なお、一般入試で募集定員に満たなかった高校・学科については、3月下旬に二次募集(追加募集)が行われる場合があります。ただし人気校では定員割れにならないことが多いので、二次募集は主に募集人数割れの学校への救済措置と考えましょう。

推薦入試のメリット・デメリット

推薦入試(特別入学者選抜)にはどんな利点と欠点があるでしょうか。早い段階で合否が分かる反面、募集枠が限られるなど特徴があります。主なメリット・デメリットを整理します。

推薦入試のメリット

  • 早期に進路が決まる: 推薦入試は2月中旬には合格内定の通知が出るため、一般入試を待たずに結果が分かります。合格すれば残りの中学生活を受験のプレッシャーから解放されて過ごせますし、心に余裕を持って卒業準備や高校入学の準備ができます。「春まで落ち着かない…」という不安がないのは大きな利点です。

  • 一発勝負に頼らない総合評価: 筆記試験の点数だけでなく、内申点(調査書)や面接での人柄・意欲、作文・実技等のパフォーマンスも評価対象になります。中学校でコツコツ積み上げてきた成績や部活動・生徒会での実績、取得資格などがある人にとっては、それらをアピール材料として活かせるチャンスです。「勉強以外も頑張ってきた」という人ほど有利になりやすいでしょう。実際、公立高校の一般入試では部活動や生徒会の実績は点数化されないのがほとんどですが、推薦入試ではそうした活動も評価の対象になり得ます。

  • 学力試験の負担が比較的軽い: 筆記は3教科のみで5教科より範囲が狭く、勉強の負担がやや軽いです(その分面接や小論文対策は必要ですが)。「理科社会が苦手…」という場合でも、推薦なら主要3教科に注力できます。また、学校によっては筆記試験自体を課さず面接・作文のみで選考するケースもあり、必ずしも筆記の得点力だけで決まらない点は魅力です。

  • 受験料や時間の節約: 公立高校の推薦入試は1校しか受けられないため、私立併願校がなければ受験そのものに費やす費用や日数が少なくて済みます。私立受験を複数校受ける場合に比べ、家計的・精神的な負担が軽減されるでしょう(ただし私立併願者は結局私立の受験料は必要)。

推薦入試のデメリット

  • 募集枠が少なく競争率が高い: 推薦入試は募集定員自体が限定的であるため倍率が高くなりやすいです。人気校では数倍の競争率になることも珍しくありません。実際、2025年度の岡山県公立高特別選抜の平均志願倍率は約1.44倍と報道されています。志望者が定員の2倍前後にもなる狭き門で、一般入試以上に高倍率になる学校もあります。「推薦入試は合格率が高い」と思われがちですが、岡山県の場合、決して楽な試験ではありません。例えば、県内有数の進学校・岡山一宮高校(理数科)の推薦倍率は2.80倍西大寺高校(国際情報科)は2.95倍と非常に高倍率でした。推薦枠20%程度の普通科でも、トップ校では内申オール5クラスの優秀者が集まるため簡単ではありません。

  • 内申点や中学での評価がものをいう: 推薦選抜では中学の調査書(内申点)や活動実績が重視されるため、中学3年間の成績が思わしくない場合は不利です。極端な話、主要教科オール5などの成績上位者でないと合格は厳しい学校もあります。実際、ある進学校では「自己推薦で合格するには内申点45(オール5)に近くないと難しい」と指導されるケースもありました。逆に言えば、定期テストの点や提出物などを地道に頑張って内申点を確保してきた人には有利ですが、模試や実力テストは良くても内申が低い人にはハードルが高い方式です。

  • 合格したら原則辞退できない(専願): 推薦入試は合格した場合その高校に入学することが前提になります。公立第一志望で受けて合格したら、他の公立高校の一般入試は受験できません(そもそも合格発表同日なので併願不可)。また私立高校を滑り止めにしていても、公立推薦に合格すれば公立に進学するのが基本です。合格後に「やっぱり他校に行きたい」と進路変更することはできないため、本当に行きたい高校かどうか慎重な覚悟が必要です。

  • 不合格時のリスクと負担: 仮に推薦入試で不合格だった場合、約1か月後の一般入試に改めて挑むことになります。短期間で気持ちを切り替えて勉強を仕上げる必要があり、精神的な負担は大きいです。推薦対策(面接練習や小論文準備)に時間を割いた分、一般入試の勉強開始が遅れる恐れもあります。推薦入試に向けて対策しつつ、「落ちたら一般も受けるから…」と二兎を追う難しさがあります。特に推薦入試直後から一般入試までは3週間程度しかなく、周囲のライバルはその間も5教科の勉強を続けてきていることを考えると、もしもの時のリスクも考えておかねばなりません。

  • 試験内容への対策が特殊: 面接や小論文など、一般入試では経験しない形式の試験対策が必要です。人前でしっかり話せないといけない、志望動機を作文用紙に論理立てて書けないといけない、といった準備は筆記対策とは別の努力が求められます。「筆記試験なら点が取れるが面接は苦手…」というタイプの人には不向きな面があるでしょう。また、推薦入試で課される課題は高校ごとに違うため、過去問情報が限られていて対策しづらいという難点もあります。

一般入試のメリット・デメリット

次に、一般入試(一般選抜)についてのメリット・デメリットです。こちらは全員が受ける通常の入試ですが、人によっては推薦よりこちらの方が向いている場合もあります。

一般入試のメリット

  • 学力勝負で逆転可能: 一般入試は当日の5教科テストの出来が合否に大きく影響します。中3の最後の追い込みで学力が伸びた人や、模試で実力をつけてきた人にとっては一発試験で勝負しやすい方式です。たとえ内申点が多少低くても、当日の点数が高ければ挽回できます。「内申が足りないから推薦は無理だけど、当日点で勝負したい」という受験生には一般入試の方がチャンスがあります。実際、推薦入試で不合格だった生徒が一般入試では合格を勝ち取るケースも少なくありません。

  • 併願や選択肢の自由度: 推薦入試と違い、公立・私立含め複数校を受験することが可能なのもメリットです。公立一般入試は原則1校しか受けられませんが、別日程で私立高校を併願受験するのが一般的です。公立が第一志望でも「万一落ちてもこの私立に行こう」という滑り止め校の確保ができます。推薦入試だと合格=入学確定なので他校を受けられませんが、一般入試組は結果を見てから進路を選択できるわけです。また、公立一般入試がダメでも二次募集や私立後期入試など最後のチャンスが残る場合もあり、リスク分散がしやすいと言えます。

  • 公平でシンプルな選抜: 一般入試は基本的にテストの点数で合否が決まるため、選考基準が明快です。「先生の推薦が必要」「面接官の主観」といった要素が少なく、受験生にとっては実力勝負で納得しやすい方式でしょう。特に公立トップ校などでは透明性の高い選抜が行われるので、公平感があります。「内申や面接よりテストで評価してほしい」というタイプの受験生には適しています。

  • 中学3年間の集大成として取り組みやすい: クラスメイトの多くが挑む一般入試は受験勉強のペースが掴みやすく、学校の授業進度や模試・過去問演習などオーソドックスな対策で戦えます。推薦特有の準備が不要な分、5教科の学習に専念できます。学校の先生方も一般入試対策を中心に指導してくれるため、対策情報が豊富で取り組みやすい利点があります。

一般入試のデメリット

  • 定員オーバーの競争は避けられない: 少子化の影響で岡山県全体の公立高平均倍率は1.04倍(2025年度)と低くなっていますが、人気校・人気学科では依然として競争があります。学科によっては一般入試でも2~3倍以上の高倍率になることもあります。例えば2025年度一般入試では、岡山工業高校デザイン科が3.88倍、建築科3.13倍、西大寺高校商業科2.69倍など専門系を中心に高倍率なケースが見られました。全体として募集人員5,802人に対し志願者5,968人で1.04倍という数字は、「定員割れの学校も多い反面、一部では依然狭き門がある」ことを意味します。希望者が集中する人気校では結局厳しい戦いになる点は心得ておきましょう。

  • 本番一発のプレッシャーが大きい: 一般入試は試験日が年に1回限りであり、当日の体調やメンタルが結果を左右します。どんなに実力があっても、本番でミスをしたり体調不良だったりすると不合格になってしまいます。リスクヘッジとして私立を受験していても、公立第一志望の場合はその1日に全てが懸かるプレッシャーがあります。推薦組は早めに進路が決まりますが、一般組は発表の3月中旬まで落ち着かない日々を過ごすことになり、精神的な負担は大きいでしょう。

  • 内申点が足を引っ張ることも: 一般入試でも調査書(内申点)は選考材料に含まれます。筆記試験重視とはいえ、極端に内申が低いと合否に影響する場合もあります。とくに同程度の点数で合格ライン上に複数人いるような場合、内申点や中学校での生活態度が加味されることがあります。「自分はテストだけできればいいや」と内申対策を疎かにしていると、一般入試でも思わぬ形で不利になる可能性がある点に注意が必要です。

  • 結果通知が遅く不安な期間が長い: 一般入試の合格発表は3月中旬で、私立の結果発表(1~2月頃)より遅いことがほとんどです。公立一本で受験する場合、周囲の私立進学が決まった友人たちを横目に、自分だけ3月まで結果が出ず不安…という状況にもなりがちです。また合格発表後、入学までの準備期間が1か月ほどと慌ただしい点もデメリットと言えます(推薦合格者は発表までに余裕があります)。

志望校によって変わる有利・不利のケース

推薦入試が有利か一般入試が有利かは、志望校や志望する学科によっても変わります岡山県内の高校では学校ごとに推薦枠の割合や応募状況が異なるため、「この学校を受けるなら推薦がおすすめ」「この学校は一般入試一本勝負が無難」といったケースがあります。いくつか具体例を見てみましょう。

  • 専門学科・コース志望の場合: 工業科や商業科、体育科、理数科といった専門学科では推薦入試の募集枠が大きく、推薦で大半の定員を埋める学校が多いです。例えば岡山工業高校では定員の8割を特別入試で募集しています。このように推薦枠が多い場合、一般入試の残り枠が少なくなるため、専門学科志望者は推薦入試に挑戦したほうが合格のチャンスが広がるでしょう。逆に推薦を受けずに一般入試だけだと定員自体が少なく狭き門になりがちです。志望学科が「推薦選抜で○割募集」などと発表されている場合は、できる限り推薦入試から挑戦することを検討しましょう。実際、ある工業高校では推薦で不合格だと一般枠の競争倍率がさらに高くなり、不利になる例もあります。

  • 進学校普通科トップ校志望の場合: 岡山朝日高校や岡山芳泉高校など伝統的な進学校普通科では、推薦入試自体を実施していないか、実施していても一部コースのみという場合があります(岡山朝日高校普通科は推薦募集なし、岡山城東高校は国際系と音楽系のみ推薦募集など)。また実施している場合でも定員の一部(20~30%程度)に限られることが多いです。このような進学校では、推薦入試は内申オール5に近いごく一部の優秀層が合格内定を得る場になっており、平均的な成績の受験生にとっては狭き門です。無理に推薦を狙って落ちてしまうと一般入試までの時間ロスにもなりかねません。したがって、トップ校志望で自身の内申や実績が学校の要求水準に達していない場合は、最初から一般入試一本に絞って学力勝負したほうが得策なケースもあります。「どうしても○○高校に入りたいが推薦は厳しそう」という人は、一般入試に向けて学力を磨くほうが合格可能性が高まるでしょう。

  • 中堅校・地元校志望の場合: 地域の中堅校や定員割れが心配されるような学校では、推薦入試で早めに定員を確保したいという思惑から比較的多めの推薦枠を設定していることがあります。そのような学校では、推薦入試の倍率もそれほど高くならず合格しやすい場合があります。例えば井原高校(普通科)では推薦枠50%で募集し、志願者95人に対し60人が内定(倍率約1.58倍)と、それほど極端な競争ではありませんでした。一方で残りの一般入試枠60人に対して志願者は41人程度(倍率0.68倍)と一般入試では定員割れになっています。このケースでは、推薦入試も比較的通りやすい上に、仮に落ちても一般入試でリベンジしやすい状況と言えます。志望校の過去の倍率データを調べてみて、推薦と一般それぞれでどのくらい競争率が違うか把握しておくとよいでしょう。学校によっては「推薦○倍、一般○倍」と毎年傾向があるので、中学校の先生や進学塾から情報を集めて戦略を練ることが大切です。

  • 特殊な選抜枠がある場合: 学校によっては中高連携の推薦枠(連携型中高一貫)や、不登校経験者対象の特別枠など、一般の推薦・一般入試とは別の選抜区分を設けている場合もあります。これらは該当者のみが受験できますが、募集人数が極めて少ないため倍率が高くなる傾向があります。特殊枠に該当する生徒は、自分がその制度を利用すべきか、通常の推薦・一般どちらで受験するか、早めに進路指導の先生と相談しておきましょう。該当しない人にとっては直接関係ありませんが、「特定の枠で一部の定員が埋まる」という認識は持っておくとよいでしょう。例えば、県北地域の○○高校では地域連携枠で数名が既に内定するため一般募集がわずか…といったケースもあります。

合格率のデータと近年の傾向

データから推薦入試と一般入試の難易度傾向を見てみましょう。近年の岡山県公立高校入試では、推薦入試の志願倍率はおおむね1.5倍前後、一般入試の志願倍率は1.0倍前後となっています。これは少子化で全体の定員に対する受験者数が減少傾向にある一方、推薦入試枠の拡大で優先的に受験しようとする動きが出ているためです。

  • 推薦入試の平均倍率: 2024年度(令和6年度)の岡山県公立高校特別入学者選抜では、県立全日制41校で志願者数6,509人、平均競争倍率1.46倍でした。2025年度(令和7年度)は倍率1.44倍と報じられており、ここ数年1.4~1.5倍程度で推移しています。つまり推薦入試では定員の約1.5倍程度の志願者がいる計算です。ただしこの平均には定員割れの学校(倍率1.0未満)も、高倍率の学校も含まれます。実際に倍率3倍前後の学校・学科もあれば、1倍を切ってほぼ全員合格というケースもあります。傾向としては都市部の人気普通科専門学科で倍率が高く、地域校で低いという二極化が見られます。

  • 一般入試の平均倍率: 2025年度公立高校一般入試(全日制)の志願倍率は1.04倍で、2年連続で前年度を下回りました。志願者5,968人に対し募集定員5,802人と、全体としては定員割れに近い状況です。2024年度は1.09倍、2023年度は約1.1倍程度で、年々わずかずつ倍率が下がっています。これは県内の受験生数の減少により全体として入りやすくなっていることを示します。ただし前述のように学校・学科ごとの差が大きく、2025年度一般入試でも約3.8倍の超高倍率となったデザイン科(岡山工業)から、岡山朝日高校普通科がまさかの定員割れ(倍率0.98倍)まで、幅広いケースがありました。トップ校の岡山朝日高校が定員割れになったのは初めてであり、これは優秀層の県外流出や私立進学、推薦入試での他校内定など様々な要因が考えられますが、一般入試一本に絞る受験生が減っている兆候とも言えます。今後も一般入試の平均倍率は大きく上昇しない見込みですが、依然として人気校・人気コースでは競争が存在します。自分の志望校が近年倍率がどう推移しているか(上がっているのか下がっているのか)も調べ、戦略を立てましょう。岡山県教育委員会やニュースサイトで毎年「志願状況」が発表されているので要チェックです。

  • 推薦枠拡大の影響: 前述のとおり、令和5年度以前は多くの学校で推薦募集は定員の最大50%程度でしたが、近年は上限80%まで認められ各校が推薦枠を増やす傾向にあります。これにより、より多くの生徒が推薦入試に挑戦し、早めに合格を得る道が開けています。一方で一般入試だけで合格できる人数は減る方向にあり、「まず推薦ありき」の流れが強まっています。例えば倉敷天城高校理数科など推薦のみで定員充足となる学科も登場しています。このような傾向から、「安全策として推薦も受けておく」という受験生も増えています。推薦入試でダメでも一般入試がある、と二段構えで考える人が多くなれば、推薦入試の倍率がさらに高まる可能性もあります。直近のデータでは推薦1.4倍:一般1.0倍程度の差がありますが、将来的には推薦>一般の図式がよりはっきりするかもしれません。

推薦と一般、どちらを選ぶべき?判断ポイントまとめ

ここまでの違いやデータを踏まえ、「結局、自分は推薦入試と一般入試のどちらを選ぶべきか?」という判断ポイントを整理してみます。人それぞれ成績や志望状況が異なるので一概には言えませんが、以下のようなポイントに当てはまるか考えてみてください。

◆ 推薦入試に向いている人・推薦を積極的に検討すべきケース

  • 内申点が高く、中学校での評価が優秀な人: 例えばオール4以上、できれば5が多い成績を持っているなら、推薦入試で内申が強力な武器になります。特に志望校のレベルが自分の内申に見合った範囲なら、推薦合格の可能性は高いでしょう。逆に内申点に自信がある人ほど一般入試だけではもったいないです。調査書でアピールできるうちに推薦枠を狙ってみましょう。

  • 部活動・生徒会などで実績がある人: キャプテン経験者、大会入賞者、生徒会長など、学校内外で目立った成果を残している人は、推薦入試で評価されやすいです。面接でもアピール材料になりますし、調査書にも活動記録が記載されます。一般入試ではこうした実績は点数になりませんから、強みを活かすなら推薦です。「文武両道で頑張ってきた」「リーダーシップを発揮してきた」ことを売りにできる人は推薦入試で光るでしょう。

  • 志望校が専門学科・コースで推薦枠が大きい: 前述の通り、専門学科志望の場合は推薦入試が事実上の本番です。例えば志望が工業科・商業科・看護科・外国語コースなどであれば、定員の大半は推薦で埋まることが多いです。そのため第一志望がそういった学校なら、迷わず推薦入試に挑戦しましょう。仮に不合格でも一般入試での再チャレンジがありますし、推薦を受けない理由がありません。

  • 志望校を絶対に変えるつもりがなく早く合格を決めたい: 「もう○○高校しか考えていない。他は眼中にない」というくらい志望校が明確で、合格のためなら多少リスクを取っても早く結果が欲しい人にも推薦入試は向いています。合格すれば一足先に進路確定できるので、残り時間でその高校の予習をしたり、高校でやりたいことの準備に取り組めます。志望校愛が強い人ほど、推薦で合格できたときのメリットは大きいでしょう。

  • 面接や自己PRが得意な人: 人と話すのが得意、自己分析ができていて志望理由をしっかり語れる人は、推薦入試で好印象を残せます。緊張せずハキハキ受け答えできる、自分の長所をアピールできる性格は推薦向きです。逆に筆記試験以外で自分を売り込むチャンスだと思って積極的に挑めるでしょう。

◆ 一般入試に向いている人・一般を優先した方がよいケース

  • 模試や実力テストの成績が内申より高い人: 平常点は振るわないけど実力テストでは上位、というような「本番型」「筆記試験で点が取れるタイプ」の人は一般入試向きです。入試本番で逆転できる可能性が高いため、無理に推薦にこだわらず5教科の学力磨きに専念する方が吉です。「内申は3が多いけど偏差値は高い」なんて人は、一般入試で勝負しましょう。

  • 内申点が低めで推薦基準に届いていない人: 志望校の先生から「推薦は厳しいかも」と言われるような場合、推薦入試に労力を割くより一般入試一本に集中した方が結果的に合格の近道です。推薦で不合格になってから一般対策…では時間ロスになるので、最初から一般で合格点を狙う勉強をした方が合格可能性が上がります。「評定オール3台だけど志望校のボーダー偏差値は届いている」という場合も同様です。

  • 筆記試験で実力を正当に評価してほしい人: 面接が苦手、人前で話すと実力を出せないという人は、無理に推薦を受けず筆記一本で評価してもらう方が安心です。また「中学時代は部活より勉強を頑張ってきた」というように特筆すべき活動がない人も、一般入試で十分戦えます。筆記の得点力に自信があり、「テストで○○高校合格レベルに到達できる見込みがある」と思えるなら一般入試で堂々と勝負しましょう。

  • 併願受験で進路の選択肢を残したい人: 公立第一志望だが私立も含めていくつか学校を見比べたい、最後まで進路を悩みたいという人は推薦せず一般まで粘る方が良いです。推薦に合格してしまうと進路の選択肢はそこで固定されてしまいます。「やっぱり他県の高校も気になる」「私立の特待狙いも考えている」等、進路の幅を狭めたくない人は一般入試に回りましょう。また、推薦で合格すると高校によっては入学前課題や講習が早めに課されることもあり、3月以降忙しくなる場合もあります。3月いっぱいは他のことに時間を使いたい、という人も一般入試組のほうが自由度は高いです。

  • 安全校を確保しつつ第一志望に挑戦したい人: 公立一般入試の場合、私立の合否を見てから進路決定できます。「公立がダメなら私立○○に行く」というプランを立てやすいのは一般入試の強みです。推薦入試ではこの“すべり止め”が効きません。確実に高校には進学したいが第一志望にもチャレンジしたいという場合、公立一般+私立併願のほうが安全策を取りやすいでしょう。実際、「推薦で公立落ちてしまい、私立も受けていなくて進路が…」という事態は避けたいところです。リスク管理重視なら一般入試です。

以上のポイントを参考に、自分はどちらに向いていそうか考えてみてください。「内申もあるし第一志望も決まっているから推薦で行こう!」という人もいれば、「色々悩んでいるし最後まで実力を伸ばして一般で勝負したい」という人もいるでしょう。大事なのは、自分の強み・弱み、志望校の入試傾向を踏まえて戦略を立てることです。学校の先生や塾の講師とも相談し、自分に有利な受験方式を選びましょう。場合によっては推薦→一般両方受験というプランもあります。特に専門学科志望者などは「まず推薦に挑戦し、ダメでも一般でもう一度チャレンジする」気持ちで準備する人が多いです。その際は推薦対策と並行して5教科の勉強も続け、一般入試に響かないようにすることがポイントです。

まとめ:自分に合った受験方式でチャレンジを!

岡山県の高校受験における推薦入試と一般入試の違い、そしてメリット・デメリットを見てきました。結論として、「どちらが有利か」は受験生一人ひとりの状況によります内申点が高く早く合格を勝ち取りたい人には推薦入試が有力な選択肢ですし、学力勝負で逆転したい人や選択肢を残したい人には一般入試が向いています。志望校の募集要項や過去の倍率もチェックしつつ、自分にとってベストな受験方式を選びましょう。

幸い、岡山県では推薦入試でチャンスを掴み、ダメでも一般入試で再挑戦できる環境が整っています。どちらの道を選ぶにせよ、最後は本人の実力と熱意がものを言います。推薦を受ける人も一般一本の人も、悔いのないよう準備を進めてください。高校受験はゴールではなくスタートです。自分に合った方法で志望校合格という切符をつかみ、希望する高校生活への一歩を踏み出しましょう!

参考資料: 岡山県教育委員会発表資料、各高校募集要項、進学塾の情報サイト、報道記事など。