岡山大安寺中等教育学校(以下、大安寺)は県内トップレベルの進学校として知られ、6年間一貫教育のメリットを活かした高度なカリキュラムを提供しています。その一方で、「宿題が多すぎて泣いた」と形容されるほど宿題の量が多いことでも有名です。実際に在校生や保護者からは、宿題の大変さに関する様々な声が聞かれます。本記事では、大安寺の宿題事情について実体験に基づく情報をまとめます。志望校選びで悩む受験生や保護者の方が、大安寺の宿題の量や内容、向き不向きについて再考する材料になれば幸いです。
宿題の量・頻度と具体的な内容
大安寺では日々の家庭学習時間として相当なボリュームが求められます。学校の自己評価書によれば、1年・2年では「平日2時間・休日4時間」、3年・4年では「平日3時間・休日5時間」を家庭学習の目標に掲げています。実際、在校生の口コミでも「平日も週末も宿題が多い」との声があり、毎日それだけの時間を宿題に費やさねば追いつかないようです。
宿題は毎日欠かさず出され、週末には更に大量の課題が課されます。ある保護者は「宿題は多く、部活をすると週末がほぼ潰れます。家族で泊まりがけの旅行なども難しくなる」と述べており、親もその覚悟が必要だと指摘します。平日の放課後はもちろん、土日も宿題に追われる生活になりがちで、生徒たちは自由に使える時間が極端に少ないようです。
では具体的にどのような宿題が出るのでしょうか。一言で言えば、復習中心で質・量ともにハードな内容です。例えば授業で間違えたテスト問題のやり直しが宿題として課されることもあり、いい加減にはできません。課題の難易度も高く、「多いだけでなく難しいので自力でやっていた頃はもっと時間がかかった」という声もあります。英語ではNHKラジオ講座『基礎英語』を聴取する課題が出ていたとの証言もあり、語学の自主学習まで含まれています。このように大安寺の宿題はボリュームだけでなく中身も濃いため、生半可な取り組みでは消化しきれないようです。
宿題に関する不満や愚痴あれこれ
大量の宿題に直面した生徒や保護者からは、様々な不満や愚痴が聞かれます。主な声をまとめると次のようになります。
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「宿題が多すぎる!」 – 単純に課題量の多さへの悲鳴です。毎日数時間を宿題に取られるため、「何でこんなに宿題が多いんだ!」と怒り出す生徒もいます。実際、市立中学に通う友達の宿題量を知った大安寺の生徒が「羨ましい」と漏らしたというエピソードもあり、他校との比較で不満を感じるようです。
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「週末まで潰れてしまう…」 – 部活に加入している生徒の場合、休日はほぼ課題で終わってしまい、「子供の遊ぶ時間や部活の練習時間もほとんどない」と嘆かれます。家族旅行などまとまったレジャーの計画も立てにくく、生活全体が勉強中心になることへの戸惑いが見られます。
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「内容が難しくて大変」 – 宿題の量だけでなく難易度にも不満の声があります。「宿題が多いですが提出できなかったことは無いようです。でも仲間内で答えが出回ってるのではと思っています…」という保護者の指摘もあり、生徒同士で解答を融通し合わなければこなせないほど難しい(量が多い)というニュアンスが伺えます。真面目な生徒ほど自力で完璧にやろうとして時間がかかり、「要領が悪いと本当に大変」という声も上がっています。
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「他のことが犠牲になる」 – ある保護者は「宿題に追われて睡眠時間の確保が難しい」「習い事も全部やめざるを得なかった」といった悩みを語っています(みんなの中学情報より)。平日7時間授業+塾+宿題という生活では、睡眠や趣味の時間を削るしかなく、子供の心身への負担を心配する声も少なくありません。
こうした不満が噴出する背景には、「想像以上の課題量」と「中学生離れした勉強漬けの日々」があるようです。大安寺に入学して初めてこの現実に直面し、泣きたくなる思いを経験する生徒もいるでしょう。実際、「宿題の量や進度の速さで子供のやる気が失せたら巻き返しが厳しいだろう」という保護者の想像もあります。それだけ宿題が重圧になり得るということです。
宿題を負担に感じる生徒の特徴
では、どんな生徒が特に宿題を重荷に感じやすいのでしょうか。口コミや体験談からは、いくつかの共通点が浮かび上がります。
まず、勉強に対する耐性や効率が低い生徒は苦労するようです。ある保護者は「うちの子も真面目だけど要領が悪い。小学校の時のように成績は付いてこず、親としてはヤキモキするばかりです」と嘆いていました。要するに、真面目でも処理能力が追いつかないタイプは宿題地獄に陥りがちで、成績も思うように伸びない傾向があります。
また、入学前とのギャップに戸惑うケースもあります。普通の公立小学校でトップだった「普通の子」が頑張って大安寺に入ると、周囲のレベルや課題量についていけず「子供も親もかなりしんどい」と感じるだろうと指摘されています。実際、大安寺の教育は「自立した子供が集まっていることが前提」のようなところがあり、入試偏差値自体はそれほど高くなくても自主的に勉強できる素養が求められるようです。そのため、自主性が不足していたり受け身な子だと負担が大きくなるでしょう。
極端な例では、「本当に勉強が大好きな子しか入っても苦しくなるだけだと思います」と在校生自らが語っています。この生徒は勉強面・友人関係の両面でつまずき、2年半も保健室登校(不登校状態)になり他校への転校を予定しているとのことです。大安寺ではこのように不登校気味になってしまう生徒も複数いると打ち明けています。入学者数と卒業者数の違いからもわかりますが、退学(転校)している生徒の数が近年増えています。要するに、「勉強そのものが苦にならない子」でないと大安寺の宿題ペースには耐えにくく、勉強嫌いな子や要領の良くない子には向き不向きがはっきり出る環境だといえます。
宿題をうまく乗り越えている生徒の工夫
一方で、この大量の宿題をうまく乗り越えている生徒もいます。彼らはどのように工夫しているのでしょうか?
1. 小学生時代からの鍛錬 – ある保護者は「小学校の時から塾で勉強漬けで、その中で効率良く遊んでいた子供は耐性がある」と述べています。幼いうちから勉強と時間管理の習慣が身についている子は、中学で急に宿題が増えてもショックが小さく、上手に両立できるようです。逆に言えば、入学前からコツコツ学習する習慣を培っておくことが大安寺攻略の鍵と言えるでしょう。
2. 仲間と支え合う – 大安寺では生徒同士の協力も見られます。例えば「仲間内で答えを出し合って宿題を片付けているのでは」と推測する保護者もいました。半ば「自習できる子の集まり」が前提の学校ですが、実際には友達同士で教え合ったり答案を共有したりすることで何とか提出に間に合わせているケースもあるようです。ただし答えを写すだけでは力にならないので、本当の克服策とは言えないかもしれません。とはいえ、同じ苦労を分かち合う仲間の存在は精神的にも大きな支えでしょう。
3. 塾や追加学習の活用 – 皮肉なことに、「入学前は学校の授業と宿題だけで十分カバーできると思っていたけれど、実際は塾に通っている生徒が大半だった」との証言があります。学校側は「塾に通うのは構わないが、塾の宿題に追われて学校の宿題をおろそかにしないように」と注意喚起していますが、現実には多くの生徒が塾や通信教育など学校外のサポートを利用しているようです。難度の高い課題を理解するために塾で先取り学習をしたり、効率の良い解法を教わって時間短縮を図ったりと、課外リソースをフル活用して乗り越える生徒も少なくありません。一方、学校の宿題に追われて、塾の宿題に時間を回すことができず、通塾を断念した生徒も少なくありません。
4. 上級生や先輩のアドバイス – 大安寺では異学年交流が活発で、先輩が後輩を助ける伝統があります。例えば「新入生を迎えた時は、3年生(中3)が1年生の教室を訪問して授業や宿題への取り組み方をアドバイスしている」そうです。先輩から直接「こう勉強すると良いよ」「このぐらいのペースでやれば大丈夫」といった具体的な助言を受けられるのは心強いですね。学校全体で“チーム大安寺”として助け合う雰囲気があり、これも宿題を乗り越える支えになっているようです。
5. 家庭でのサポートと息抜き – 最後に欠かせないのが保護者の支援です。前述のように、大安寺生の親は「親も覚悟が必要」と言われるほどで、日々の声かけや環境づくりが重要です。ある保護者は「子供のやる気が失せないよう、かなり気を使って息抜きさせている」と明かしています。追い込みすぎて燃え尽きては元も子もありません。適度にリフレッシュする時間を作り、モチベーションを維持してあげることが、長い6年間を乗り切るポイントだといえるでしょう。
大安寺の教育方針と宿題の位置づけ
これほど宿題が多い背景には、学校の明確な教育方針があります。大安寺のキーワードは「自分で勉強できる力を大切にしています」というものです。学校側も公式Q&Aで「宿題は決して少なくありませんが、しっかり復習し定着させる習慣を付けていけば心配いりません」と述べており、大量の宿題を出すのは自主的な学習習慣を育てるためだと説明しています。言い換えれば、宿題=授業内容の復習・定着の場と位置づけ、家庭学習まで含めて初めて学力が伸びるという考え方です。
また、大安寺は中高一貫校として6年間を見通した先行学習を行っています。実際、在校生の証言によれば「中学2年の時点で中学内容の学習はほとんど履修し(終え)」とあり、中2で中学範囲をほぼ終了してしまう高速カリキュラムが敷かれているようです。中3以降は高校内容に入る先取り教育になるため、当然ながら授業の進度も速く、その分家庭での自主学習(宿題)も多くなるわけです。学校評価書でも前述のように各学年で家庭学習時間の目標を掲げ、課題提出率を95%以上に保つことを理想とするなど、学校全体で宿題を含む家庭学習を重視していることが分かります。
このようなハードな勉強環境ではありますが、成果もしっかり出ています。大安寺は難関大学への合格者を多く輩出しており、2024年度は東京大学に現役合格者13名を数えました。教員も熱心で、「読書量の多さが学力向上につながる」として意識的に読書指導に力を入れるなど、生徒の学力を伸ばすための工夫を凝らしています。言い換えれば、宿題漬けの毎日も将来の実を結ぶための投資と捉えることができます。大安寺の教育方針は「旺盛な知的好奇心を持って自主的に学ぶ生徒」を求めるもので、宿題の多さもその理念に沿ったものといえるでしょう。
まとめ:大安寺の宿題は向き不向きを考える材料に
岡山大安寺中等教育学校のリアルな宿題事情を見てきました。要点を整理すると、宿題の量・難易度ともに非常に高く、勉強が好きで自主性のある生徒には充実した6年間になる一方、そうでない生徒にとっては大きなプレッシャーとなり得ます。部活や娯楽の時間が削られるほどの課題漬けの日々は、人によっては精神的に追い詰められる原因にもなります。事実、「入ってから苦しくなるだけ」という声や不登校者の存在も報告されています。
しかし、裏を返せばそれだけ鍛えられる環境とも言えます。宿題を通じて自主学習の習慣が身に付き、授業についていければ飛躍的に学力が伸びるとの評価もあります。実際、ハードな宿題を乗り越えた先輩たちは難関大学へ羽ばたいており、大安寺で得た勉強耐性や地力は大きな財産となっています。
志望校選びにおいては、ぜひお子さんの性格や学習スタイルとの相性を考えてみてください。大安寺は「勉強好きで自分でどんどん取り組める子」には向いていますが、そうでない場合は入学後に苦労する可能性があります。もし大安寺を目指すなら、入学前からコツコツ学習する習慣づけをしたり、入学後も保護者がサポートしたりといった備えがあると良いでしょう。反対に、宿題の大変さばかりでなく学校行事での異学年交流や自由な校風を楽しんでいる生徒も多いとのことなので、学びへの前向きな姿勢さえあれば6年間で大きく成長できる土壌が整っています。
「宿題が多すぎて泣いた」…確かに大安寺の宿題は覚悟が要ります。しかし、それを乗り越えた先に得られるものもまた大きいはずです。受験生の皆さんと保護者の方は、本記事の体験談や声を参考に、大安寺が自分(自分のお子さん)にとって本当に合った学校かじっくり見極めてください。大変さも含めて納得の上で進学すれば、きっと実りある学校生活を送れることでしょう。
参考資料:
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教育情報サイト「ぽてん」学校紹介記事